これから学ぶなら、受ける版に合わせて選ぶ
ITILには版があります。長く使われてきたのがITIL v3(2011)、その後継がITIL 4です。さらに2026年1月29日には、後継の「ITIL (Version 5)」が発表されました。英語版Foundationは2026年2月、日本語版のITIL Foundation (Version 5) は2026年5月に出ています(PeopleCert公式サイトで2026年8月確認)。
ITIL v3の知識で ITIL 4 を受けるのは避けてください。 理由は「古いから」ではありません。中心に置く考え方そのものが入れ替わっていて、v3の知識をそのまま持ち込むと、かえって選択肢を選び間違えるからです。
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いちばん大きな違いは「プロセスを回す」から「価値を共創する」へ
ITIL v3は、サービスのライフサイクルの段階に沿ってプロセスを並べる構成でした。「この段階では、このプロセスを、この順に回す」という、手順の体系です。
ITIL 4の中心は、サービスバリューシステム(SVS)という一つの仕組み。組織に入ってくる「機会と需要」が、SVSを通って「価値」として出ていきます。その全体像の中に、原則もプラクティスも改善も収まっています。
ITIL 4は、価値は提供者が一方的に届けるものではないと言い切ります。価値はサービス提供者と消費者が協働して共創(co-create)するものだ、という立場。ここがv3との最大の分岐点になります。
| ITIL v3(2011) | ITIL 4 | |
|---|---|---|
| 中心の考え方 | サービスのライフサイクルに沿ったプロセス | サービスバリューシステム(SVS)と価値の共創 |
| 組み立て | 段階ごとにプロセスを配置 | 原則・ガバナンス・バリューチェーン・プラクティス・継続的改善の組み合わせ |
| 活動の流れ | 定義された順序で進む | バリューチェーンの活動を、状況ごとに組み替えて流す |
| 価値の捉え方 | 提供者が価値を届ける | 提供者と消費者が価値を共創する |
| 時代背景 | 従来型のIT運用 | アジャイル・DevOps・リーンと併走できる形 |
ITIL 4で新しく中心に来たもの
v3にはなかった、あるいは位置づけが大きく変わった要素です。試験でも、ここが出題の軸になります。
1. 7つの従うべき原則(guiding principles)
「価値に着目する」「現状からはじめる」「フィードバックをもとに反復して進化する」「協働し可視性を高める」「包括的に考え、取り組む」「シンプルにする、実践的にする」「最適化し、自動化する」の7つです。
これらは特定の場面のルールではありません。あらゆる意思決定に通底する推奨として置いてあります。ITIL 4 Foundationでは配点が大きく、状況を示して「どの原則が最も当てはまるか」を問う形でよく出ます。
2. サービスバリューチェーンの6つの活動
「計画」「改善」「エンゲージ」「設計及び移行」「取得及び構築」「提供及びサポート」の6つです。
大事なのは、この6つが固定の順序で流れるわけではないという点。状況ごとに必要な活動を必要な順で組み合わせて「バリューストリーム」を作ります。v3の「決まった順序で段階を進む」感覚のまま読むと、ここで取り違えます。
3. サービスマネジメントの4つの側面
「組織と人材」「情報と技術」「パートナとサプライヤ」「バリューストリームとプロセス」の4つ。どれか一つが欠けてもサービスは成り立ちません。常に4つ全部をセットで見てください。
4. プロセスではなく「プラクティス」
v3の「プロセス」に相当するものを、ITIL 4はプラクティスと呼びます。単なる言い換えではありません。ITIL 4の定義は「作業を遂行するための組織のリソース一式」で、4つの側面すべてを含むものとしています。手順書だけを指す言葉ではありません。
インシデント管理や問題管理、変更実現、サービスデスク、継続的改善といった名前は、v3から引き継いでいます。ただし目的の書かれ方が変わっているものがあります。名前が同じだから中身も同じ、と思い込まないでください。
5. 継続的改善の位置づけ
v3では改善はライフサイクルの一段階でした。ITIL 4では、SVSの構成要素であると同時に、バリューチェーンの一活動でもあるという二重の置き方になりました。ITILの公式シラバスは「改善は組織の全員の責任」とも明記しています。
v3で覚えた知識は、どこまで使えるのか
使えるもの:サービスマネジメントの土台の感覚(インシデントと問題は別物、変更には統制がいる、合意した水準を測る必要がある、といった実務感覚)。用語の多くは名前が残っているので、ゼロからよりは入りやすいはずです。
使えないもの:構成そのものです。「どの段階のどのプロセスか」という覚え方は、ITIL 4では答えの出し方が変わります。試験が問うのは「SVSのどこに位置するか」「どの原則に沿った判断か」「どのバリューチェーン活動か」です。ライフサイクルの段階は問いません。
いちばん危ないのは、v3の枠組みを土台にITIL 4の用語を上塗りすることです。用語だけ差し替えても、問題文が求める考え方の軸は直りません。だから二択まで絞ってから外します。構成は入れ替えるつもりで学び直すのが、結局いちばん速い道です。
学ぶ教材が「どの版か」を必ず確認する
ITILには複数の版が流通中。教材を選ぶときは、それがどの版に対応しているかを最初に確認してください。中心概念が入れ替わっている以上、版が違えば問われ方も答えも変わります。
確認する場所は単純です。サービスバリューシステム(SVS)、7つの従うべき原則、4つの側面、バリューチェーンの6活動が主役になっているか。この4つが出てこない教材は、ITIL 4を扱っていません。
資格道場のITIL 4 Foundation問題集は、ITIL 4 Foundationのシラバスに沿って書き下ろしたオリジナル問題です。いま挙げた4つが、そのまま出題の軸になっています。全問に解説と、選択肢ごとの「なぜそれが違うのか」を付けていますので、v3の感覚で選んで外したときも、どこで軸がずれたのかがその場で分かります。まず50問は会員登録もログインもなしでその場で解けます(本番形式の模試 第1回は無料の会員登録で解けます)。
よくある質問
Q. ITIL v3の資格を持っています。ITIL 4も取り直すべき?
ITIL v3とITIL 4は構成が大きく異なるため、ITIL 4を受けるなら学び直しが必要です。2026年1月には後継の「ITIL (Version 5)」が発表され、日本語版のITIL Foundation (Version 5) は2026年5月にリリース済みです。PeopleCert公式サイトは、ITIL 4の認定試験と研修を2027年12月をもって終了予定と案内しています(2026年8月確認)。どの版を受けるかは、勤務先の要件や取得の目的に合わせてください。お申し込み前に公式サイトで最新情報の確認を。v3の実務感覚は土台として効きます。ただし試験対策としては、構成を入れ替えるつもりで学び直すのが安全です。
Q. v3とITIL 4で、用語は全部変わった?
全部ではありません。インシデント管理や問題管理、変更、サービスデスクといった名前は残っています。ただしITIL 4はこれらを「プロセス」ではなく「プラクティス」と呼びます。目的の書かれ方が変わっているものもあります。名前の一致を根拠に中身も同じと考えないでください。
Q. ITIL 4のほうが難しい?
難易度が上がったわけではありません。問われ方の軸が変わったという表現が近いです。手順の暗記より、「なぜそれが存在するか」「この状況ではどう判断するか」を説明できるかが問われます。用語を正確に押さえれば、入門レベルの試験として射程に入ります。
Q. ITIL 4 Foundationの試験概要(問題数・合格ライン・受験料)は?
ITIL 4 Foundationの勉強法と試験概要に、公式情報ベースでまとめています。
v3の覚え方は、そのままでは通用しない
- ITIL v3はプロセス中心、ITIL 4はSVSと価値の共創中心:中心概念そのものが入れ替わった
- ITIL 4の軸は、7つの従うべき原則・4つの側面・SVS・バリューチェーンの6活動
- 「プロセス」は「プラクティス」へ。名前が残っていても、目的の書かれ方が変わっているものがある
- v3の実務感覚は使えるが、構成の覚え方は使えない
- 教材は「どの版に対応しているか」を最初に確認する:自分が受ける版と揃える
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