クラウド未経験でIT業界に入ると、最初の壁として出てくるのが「AzureとAWS、どっちの資格から取ればいいのか」という問いです。
配属先が決まっていない段階なら、どちらを選んでもスタート地点としての実力はほぼ同等です。ただし「業界での普及状況」「試験の出題スタイル」「学習コストの体感差」の3点では、無視できない違いがあります。
2つの試験、それぞれの概要
Microsoft Azure Fundamentals(AZ-900)
MicrosoftのAzure認定資格の最初の階層に位置づけられる試験です。前提知識は要りません。出題範囲は、クラウドの基本概念、Azureのサービス、料金、セキュリティ、コンプライアンスとされています。
試験形式は選択式(単一選択・複数選択)が中心です。ドロップダウンや並び替え形式が混ざることもあり、択一だけとは限りません。日本語受験が可能で、Pearson VUEによるオンライン受験と試験会場での受験を選べます。
受験料や合格点の数値はMicrosoftの公式ページに掲載されています。ただし改定が入ることがあるので、受験申込の前に必ずMicrosoft Learnの試験ページで最新情報を確認してください。
AWS Certified Cloud Practitioner(CLF-C02)
AWSの認定資格体系の入門に位置する試験です。こちらも前提知識は要りません。出題範囲は、クラウドの概念、AWSの主要サービス、セキュリティ、コンプライアンス、料金、サポートモデルとして公開されています。
試験形式は選択式(単一選択・複数選択)が中心で、日本語受験が可能です。受験はPearson VUE経由で、テストセンターと自宅からのオンライン監督試験のどちらも選べます。
受験料・合格点は固定ではありません。定期的に改定されるので、最新情報はAWS公式の認定ページで確認してください。
AWS CLFの問題演習はこちら →(まず50問は、会員登録もログインもなしで解けます)
3軸で比べる
軸1:出題形式と難易度の体感差
どちらも「知識を問う」選択式が主軸です。ただし問いの性質に違いがあります。
| 観点 | AZ-900 | AWS CLF-C02 |
|---|---|---|
| サービス名の出題範囲 | Azureの主要サービス(仮想マシン・ストレージ・ネットワーク等) | AWSの主要サービス(EC2・S3・VPC等) |
| 料金モデルの出題 | 料金計算ツール・コスト管理の概念 | 料金モデル(オンデマンド・リザーブド等)の比較を問う問題が多め |
| セキュリティ出題の深さ | 共同責任モデル・Microsoft Defender for Cloudの概念レベル | 共同責任モデル・IAMの基礎・主要なセキュリティサービスの用途 |
| 試験時間 | 公式発表値で45分 | 公式発表値で90分 |
AWS CLF-C02は試験時間が長く、問題数もやや多くなっています。出題されるサービス数はAWSの方が多く、固有名詞の暗記量も少なくありません。一方でAZ-900は、Microsoftのドキュメント体系が整理されています。公式のMicrosoft Learnに沿って学習しやすいという声が多いです。
どちらが「難しい」かは受ける人によって変わります。暗記量という点では、AWS CLFの方が重いと感じる学習者が少なくありません。
軸2:業界での使われ方
日本のIT業界全体では、現時点でAWSのシェアが高くなっています。クラウドインフラ案件では、AWSを前提とする求人・案件が多い傾向があります。一方で官公庁・金融・製造業ではAzureの採用事例も増えています。どちらが「有利」かは業種・企業によって大きく変わります。ひとつの答えはありません。
SIer・受託開発のように多くの案件を扱う職種なら、AWS CLFを持っていると案件の選択肢が広がります。Microsoft製品(Office 365・Microsoft 365等)を社内利用している企業のIT部門では、AZ-900の方が直結します。Azureを積極採用している企業でも事情は変わりません。配属先が決まっていない段階では、その企業が何のクラウドを使っているかを選考中に確認します。聞けないときは、一般的なシェアからAWS CLFを選ぶのが無難な判断になります。
軸3:学習リソースの豊富さ
AZ-900 は Microsoft Learn の公式学習パス(無料)が体系的に整っています。ラーニングパスを順番にこなせば、範囲から大きく外れません。日本語コンテンツの質と量がそろっていて、公式だけで学習を完結しやすいのが特徴です。
AWS CLF-C02 は公式のAWS Skill Builderに学習コンテンツがあります。日本語対応コンテンツはAzureに比べてやや限られます。その分、国内の技術ブログや参考書籍、Udemy等の講座が充実しています。教材の選択肢で困ることはありません。
判断フローで整理する
迷ったときは、次の順番で考えると決めやすくなります。
1. 入社先・配属先のクラウドが決まっている
└─ Azure → AZ-900
└─ AWS → AWS CLF
└─ どちらか分からない → 2へ
2. 志望業種・企業タイプは?
└─ 官公庁・製造・金融 → AZ-900も選択肢
└─ Web系・スタートアップ・幅広いSIer → AWS CLFが有利なことが多い
└─ 決められない → 3へ
3. 学習スタイルは?
└─ 公式コンテンツだけで完結させたい → AZ-900
└─ 選べる教材が多い方がいい → AWS CLF
これは一般的な傾向です。個別の企業・案件の状況は必ず自分で確認してください。
どちらを取った後に何をするか
入門資格で終わらせないことが、実務家としての基本です。
- AZ-900取得後:Azure Administratorを目指すならAZ-104へ。Azureのサービス設計・運用の実力を問われる試験です。
- AWS CLF取得後:Solutions Architect AssociateまたはDeveloper Associateへの進学が一般的です。CLFで身につけた概念が土台になります。
入門資格は「クラウドの地図を頭に入れる」ための一段階にすぎません。現場ではAssociate以上の資格や実際の構築経験が評価される場面の方が多くなります。
AWS CLF(CLF-C02)の学習を進めたい方は、CLF-C02の問題集から取り組んでみてください。まず50問は会員登録もログインもなしでその場で解けます(本番形式の模試 第1回は無料の会員登録で解けます)。本番に近い形式を体験してから、学習計画を立てられます。
参考
- Microsoft Learn:Microsoft Azure Fundamentals (AZ-900) 試験ページ
- AWS:AWS Certified Cloud Practitioner 認定ページ
よくある質問
Q. AZ-900とAWS CLFを両方取る意味はありますか?
クラウドの概念は共通する部分が多く、片方を取得した後にもう片方を学ぶと学習コストは下がります。ただし、どちらも入門資格です。両方持っていても、採用選考で大きな差にはなりません。資格の数を増やすよりも、片方を取得したら上位資格や実務経験に移るほうが実務家としての評価につながります。
Q. 文系・非IT学部でも独学で合格できますか?
どちらの試験も「IT経験不問」を前提に設計されています。クラウドの概念や主要サービスを丁寧に学べる公式コンテンツも整っています。ただし、ネットワーク、仮想化、セキュリティの基礎用語は避けて通れません。初めて聞く言葉を一つひとつ確認しながら進む余裕を持った学習計画が要ります。「合格できない」ということはありません。理解を飛ばした暗記だけでは実務に活きにくいので、そこは気をつけてください。
Q. 就職活動中に取るとしたら、いつ頃取得するのが効果的ですか?
内定後・配属前の時期に取得するのが最も無駄がありません。配属先が決まれば、どのクラウドを優先すべきかが明確になります。学習と業務のつながりも作りやすくなります。選考の段階で「取得中」「取得予定」として志望動機の根拠に使うこともできます。IT業界への転職・就職活動では、学習行動の継続性を示す材料として評価される場面があります。
Q. 合格した後、有効期限はありますか?
AZ-900は現時点では有効期限が設けられていません(Microsoftの上位資格は更新が必要なものがあります)。AWS CLFは認定の有効期間が3年間です。期間後は再認定または上位資格取得による継続が必要です。ただし制度は永続ではありません。受験・更新の前に、必ず公式の認定ポリシーページを確認してください。
Q. どちらの試験も日本語で受験できますか?
はい、どちらも日本語で受験できます。ただし、翻訳の質や日本語と英語の表現のズレを気にして、英語版を選ぶ方もいます。日本語版で合格している受験者も多く、日本語だから不利になるわけではありません。公式の学習コンテンツを日本語・英語の両方で確認しておくと、用語の揺れに対応しやすくなります。